【1. モザイク荷電膜の開発】

 1枚の膜中に陰イオンを選択的に透過する陰イオン交換領域と陽イオンを選択的に透過する陽イオン交換領域が膜厚方向に対して並列に配列した構造を付与することにより、モザイク荷電膜を作製することができる(左図)。膜の両側の濃度差または圧力差によって発生する循環電流によって非常に高いイオン透過性を有することが期待でき、汽水・かん水の淡水化や食品・医療分野の脱塩への適用が期待できる。本研究室では様々な手法でモザイク荷電膜を作製し、作製した膜のイオン輸送特性を評価している。




【2. 温度応答性荷電膜】

 温度応答性高分子として知られるpoly(N-isopropylacrylamide)を荷電膜に導入することにより、温度応答性の荷電膜を作製することができる。 32oC付近の下限臨界溶解温度(LCST)を境に荷電膜の含水率や高分子網目構造が左図のように変化するため、特定イオンの膜透過挙動を温度変化によって制御することが可能である。そのため温度応答を利用した電気透析やドラックデリバリーシステムなどへの応用が期待できる。




【3. pH記憶型の荷電膜】

 従来のpH応答性膜は、とあるpH環境下の溶液中でのみその応答状態を維持することができ、例えばその後、異なる溶液に浸漬させるとその応答状態を維持する(つまりは記憶する)ことができない。一方、我々が開発を進めているpH記憶型荷電膜は、一度pH調整液に浸漬させるとその時の荷電状態を記憶することが可能であり、その後に塩溶液中に浸漬させてもその荷電状態を記憶保持することができる。このpHメモリー機能を利用し、ケミカルバルブなどへの応用が期待できる。




【4. イオン照射グラフト重合法で作製した高分子荷電膜の性能評価】

 イオン照射グラフト重合法を用いて作製した高分子荷電膜の性能評価を行っている。イオンビームを照射することによって生成したラジカルに荷電基を重合することによって、左図のような高分子荷電膜を得ることができる。イオンの透過に最適な直線形状の貫通した荷電構造を有しているため、従来の荷電膜より高イオン透過性が期待でき、電気透析等への応用が期待される。